クライアント市場で何が起こっているのか
今後5年間で、スマートフォンの利用は倍増する見通しだ。米国のコンサルティング会社オールトマン・ビランドリー&カンパニーのディレクター、マイケル・グロッシ氏は「米国在住者の3人に2人がスマートフォンを携帯するようになると推計される」と指摘する。つまり、スマートフォンは単に市場に浸透するにとどまらず、市場を支配するというのだ。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学でCIOを務めるレブ・ゴニック氏をはじめ、多くのCIOが、その前兆に気付いている。ノートPCが脇役に追いやられようとしているのだ。今やCIOは、小さいながらも強力なデバイスであるスマートフォンに対応した、エンタープライズ・アプリケーション戦略を立てなければならない。
なぜ今、スマートフォンに注目すべきなのか
今日、スマートフォンが個人のメインのコンピューティング端末になるのを妨げる要因は減少しつつある。例えば、グーグルのNexus Oneは、Wi-Fi機能と1GHzプロセッサを搭載し、最大32GBまでの外部フラッシュ・ストレージが使える。アップルのiPadや“スマートブック(3G通信が可能なネットブック)”は、基本的には特大のスマートフォンのようなものだ。スマートブックでSkypeを動かし、電話として使っているビジネス・ユーザーもいる。ゴニック氏は、ケース・ウェスタン・リザーブ大学のIT部門のエンジニアリング・チームが作成しているスマートフォンのセキュリティと普及率に関するリポートに基づき、大学の全職員が主にモバイル端末を使って仕事ができるようになるのは時間の問題であり、すでに学生はモバイル端末をメインに用いて何でもこなしていると考えている。
ケース・ウェスタン・リザーブ大学は現在、スマートフォンからアクセスできるイントラネット・ポータルを学生向けに運用している。このポータルは、最近まではノートPC用に設計されていたものである。
スマートフォンに関する課題と今後の可能性
営業やフィールド・サポートなど一部の業務では、スマートフォンがノートPCに取って代わりつつある。その他の業務でも、スマートフォンはWebベースのERPやCRMアプリケーションへのアクセスによく使われている。
調査会社CCSインサイトのリサーチ担当副社長、ジョン・ジャクソン氏は、「スプレッドシートの操作やドキュメントの作成/編集で重たい処理を大量に行うのでなければ、用途に合ったスマートフォン・アプリが見つかる可能性が高い。もし存在しなくても、どこかで作ってもらえるはずだ」と語る。
一方、パンドITのアナリスト、チャールズ・キング氏は、現状では貧弱な入力機能、画面の小ささ、非力なプロセッサといった弱点があるため、スマートフォンはノートPCの代わりに使うには限界があると指摘する。加えてゴニック氏は、セキュリティの問題も挙げる。
実際、かねてからスマートフォンがノートPCと比べて最も弱いのはセキュリティ面なのだが、その差は縮まりつつある。例えば、 BlackBerry Enterprise Serverは、BlackBerryからマイクロソフトのExchangeなどへの安全で信頼性の高い接続を実現しており、ユーザーはコンプライアンスや、社内の機密文書に対する脅威をあまり心配せずに済む。また、Exchange ActiveSyncを使って、iPhoneから企業の電子メールへのアクセスを保護するといったことも可能になっている。
将来に向け、CIOは何をすべきか
スマートフォンは当面、ノートPCを補完する位置づけにとどまるというのがアナリストらの見方である。ただし、その状況は5年以内に変わりそうだ。スマートフォンの機能が改善され、プロセッサが高速になり、使えるアプリが充実する(オープンソース・ソフトウェアのサポートなどを含む)からである。ゴニック氏はこうした変化に備え、学内サービスのモバイル端末への対応を進めている。「エンタープライズ・サービスをスマートフォンで試す計画をまだ立てていない企業は、そろそろ動いたほうがよい」とキング氏はアドバイスする。
また今後、企業がエンタープライズ・アプリケーションを導入する場合には、スマートフォン版も用意することになる可能性が高い。それらのバージョンは補完的なものとしてではなく、将来に向けて必要不可欠な要素に位置づけなければならない。
PR