2009年7月17日に総務省が発表した「モバイルコンテンツの産業構造実態に関する調査結果」によると、2008年のモバイルビジネス市場は、前年比17%増の1兆3,524億円となった。
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モバイルビジネス市場規模の推移
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とりわけ、モバイルコンテンツ市場の前年比13%の成長率に対し、前年度比19%の成長率を見せるモバイルコマース市場の発展には目を見張るものがある。このモバイルコマース市場の発展の背景には、モバイル端末の機能拡充により、これまで以上に PC の代用としての携帯電話の側面が押し出されてきたことが挙げられる。
それに伴いモバイルアフィリエイトへの参入企業も、今まで PC アフィリエイトのみでの展開であった企業が目立っている。しかしながら、PC でのアフィリエイト展開が成功しているからといって、必ずしもモバイルでのアフィリエイトが成功するとは限らない。
そこで今回は、広告主が見落としがちな PC とモバイルのアフィリエイトの違いについて触れていきたいと思う。
■媒体属性の少なさ
モバイル検索エンジンの精度向上により、検索エンジン経由のユーザーをターゲットとした SEO、SEM 集客媒体経由の流入が伸びてきているものの、依然としてインセンティブ媒体経由での獲得がプロモーション内の大半を占める。そのため、PC アフィリエイトでユーザーへのポイント付与が NG だからと言って、モバイルアフィリエイトでもポイント NG と設定してしまうと掲載がほとんど進まず、獲得数が伸び悩むことになりやすい。
モバイルアフィリエイトでは、インセンティブ媒体のみ報酬単価を下げる、成果地点を変更する、出稿先の媒体を限定するなど、ひと工夫したうえでインセンティブ媒体を活用する方法を一考する必要がある。
■再訪ユーザーの非カウント
PC の場合、ユーザーが広告を踏んだと同時にクッキー情報が付与され、この情報は通常2か月近くユーザーに付与された状態となる。
これにより、一度アフィリエイト広告経由で広告主ページへ到達したものの、何らかの理由で離脱した場合でも、その後一定期間以内にブックマーク経由、リスティング広告経由など何らかの方法で広告主ページへ到達しアクションを起こした場合、間接効果であってもアフィリエイトの成果としてカウントされる。
それに比べ、モバイルアフィリエイトの場合、クッキーという概念自体が存在しないため、アフィリエイト広告経由の直接コンバージョン以外はアフィリエイトの成果としてカウントされず、媒体側から見た時の売上が PC に比べて上げにくいと判断され、媒体属性の広がりに抑制がかかっている傾向が強い。
しかしながら、EC 案件を強みとするいくつかの ASP をはじめ、モバイルアフィリエイトでも PC アフィリエイトと同様に、再訪トラッキングを取得できる機能を実装する ASP が増えてきているため、この懸念は解消傾向にある。
■成果地点の違い
PC アフィリエイトの場合、成果地点が店舗への来社完了や、トレード口座の口座開設完了後の入金確認後など、成果発生から1か月以上かかる“奥”の成果地点となっている案件が多い傾向にあるが、モバイルアフィリエイトの場合、元来キャリア課金型の携帯コンテンツのプロモーションが多く、成果発生=成果確定の「成果全承認」案件が非常に多く、好まれる傾向がある。
1か月、2か月後に多額のポイントが付与されるプログラムよりも、即日少額のポイントが付与されるようなプログラムの方が圧倒的にユーザーレスポンスが良い傾向にある。
というのも、モバイルインセンティブ媒体の中で獲得力の強い媒体には、アバター、アイテムなどのゲームコンテンツをポイントとして付与するものが非常に多く、ユーザーもすぐ使えるアイテムに対しアクションを起こすことが圧倒的に多いためである。ここもインセンティブ媒体での訴求方法と同様に、ひと工夫加える必要があることが多い。
■端末 ID 取得によるユニークカウント
ここまでモバイルの劣っている点のみを挙げていたが、モバイル特有の優れた点として端末 ID が挙げられる。
端末 ID をアフィリエイト用の成果トラッキングタグで取得することにより、PC のように住所やメールアドレスなど、ユーザーの任意で入力した情報に依存することなく、EC 案件での新規ユーザー、既存ユーザーの識別も容易になる。
また、無料会員登録案件などでも、ユーザーの入退会の情報をそれぞれの端末 ID から取得することが可能となる。
このように PC アフィリエイトに近づいてきたとはいえ、まだまだ大きな隔たりのあるモバイルアフィリエイトだが、今後の発展が PC アフィリエイトと同様の道筋を辿るといった確証があるわけでもなく、むしろそのユーザー属性の違いから大きく異なる道筋を辿ることも考えられる。
PC アフィリエイトでの成功例をもってモバイルも成功するだろうと安易にプロモーションを進めてしまうと、大きな落とし穴におちてしまう可能性があるため、それぞれの特性を把握し活かしたプロモーション展開が重要となる。